「精練」という仕事とは
繭からとったばかりの繊維はごわごわしています。それは、セリシンという蛋白質がついているからです。美しく柔らかく光沢のある絹の生地を作るためには、そのセリシンを取り除く必要があるのです。そこで絹を煮てセリシンを溶かし出すという作業を行います。それが、「精練」と呼ばれる作業です。
精練は、まず準備工程の「生地仕立て」を行い、それを大きな釜に入れ煮ます。このとき作業場は熱と湿気で充満しています。特に夏場は黙っていても汗が噴き出してくるような暑さです。そんな職場で社員たちは黙々と、そして慎重に仕事をこなしていきます。大釜には95℃の温度に設定された洗剤入りのお湯がたっぷりと用意され、まるでゆったりお風呂にでも浸かるかのように生地が入れられていきます。弊社では、昔ながらの石鹸練りを守っています。
他の洗剤より時間はかかりますが、絹がしっとりなめらかに仕上がるからです。釜に入れた後は、練りムラを調整するため時折人力で布を揺らします。これも力のいる仕事になります。
徐々に水温を下げた別の釜に移し替えながら丁寧にゆすぎ、セリシンや不純物、洗剤をきれいに落としていきます。そして仕上げに35℃~40℃の水でしっかり手洗いしてきれいに汚れを落とします。
地道な作業ですが、確かな品質の絹を作る上で絶対に欠かせない大切な仕事です。